神社と榊
神職にとっては当たり前の話ではありますが、神社においては榊(さかき)と言う植物を神事等において日常的に用います。
榊の特徴
ネットで調べればすぐに分かる範囲の事ですが、榊は東アジアに分布する常緑広葉樹です。中部地方以西で標高の高くない地域であれば、実はその辺りの山に自生しています。「ヒサカキ」と呼ばれる榊と紛らわしい植物、またツツジ等との見分け方としては、「葉がツルツルで縁もギザギザではない」「芽は巻き爪の様に少し曲がっている」「白い花をつけ、緑→紫になる実を付ける」と言った所でしょうか。「榊」と言う漢字は国字=大陸からの移入ではなく日本独自で作られた漢字です。もともと「さかき」と言う読みがあった所に、神社で使用する事からこの字を作ったのでしょう。
神社での利用方法
神事において使用します。玉串、大麻(おおぬさ)、神籬、鳥居や社殿祭具への飾りつけに用います。殆どの場合は平面のもの(生花店では「ヒラ」等と呼んでいます)を用いますが、一部では神籬や飾り榊で、放射線状に広がったもの(同「芯」と呼んでいます)も用います。
調達方法
境内が広く、社叢…鎮守の杜がある様な神社では、その神社内で神職らが採取します。しかし、都市部で境内が広くない…またはあまり樹木が育たないような環境であると、生花店等から購入する事も多い様です。近年はネット通販で榊農家から直接購入する事も出来るようですが、玉串(30~40㎝程度)サイズで2~500円、大麻・神籬サイズだと3000円以上(それぞれ1本で)、場合によってはそれに送料が掛かってきます。
鳥居や社殿に付けられた榊
大麻(おおぬさ)と玉串
出張祭典時の神籬
当職はこれらを神社境内で自身で採取していますが、この中で例えば八幡社の鳥居に付けられている榊(100㎝程度)を専門店で購入すれば、1対で1万円近くするのではないでしょうか。所管の神社で10万坪近い敷地があり、榊が無尽蔵に生えているからこそ出来る事です。因みに当職は年間で神籬サイズ(大きな鳥居用含む)300本程度、玉串・飾り榊サイズで600本程度は採取していますが、それでも榊を採りつくすと言う事はありません。毎年春には新芽が出てまた育ちますし、知らないうちに新しい木が生えてきています。金利や配当でで食ってるようなイメージでしょうか。
スーパー等で売っている榊について
神社で神職が使用する以外の榊と言うと、神棚に飾り付ける榊が一般的かと思います。スーパーやホームセンター等で売っている、輪ゴムで束になった榊を見掛けるかと思います。あれらの榊は、「国産」と銘打っていない限りは、その殆どは中華人民共和国産です。大陸で安い人件費で栽培され、薬剤漬けで船便で日本へ輸送されてきます。店頭に並ぶ時点で出荷から1週間以上経っているでしょう。買った時にはもう枯れ始めです。個人的にはお勧めしません。中国産の榊を購入するくらいなら、多少高くとも国産を、または山を所有している様な知り合いが居ればそこで採らせてもらう、または、自宅の庭などに植えた方が良いのではないでしょうか。
榊の育て方
自身が実際に植樹し育てたことはありませんが、普段榊を採っていての経験則としては、
・日陰
・風通しが良い
の2条件さえ合えば、ある程度どこでも育つのではないかと思います。上記2条件については、「神事で使う様な綺麗な榊を育てたいのであれば」とも言えます。と言うのも、日差しが強いと葉が変色しますし、風通しが悪いと害虫がついたり菌による病気になりやすいからです。神社境内でも、綺麗な榊は大抵スギ林、ヒノキ林の中に生えているもので、鬱蒼とした場所に生えている榊は見栄えの良いものはあまりありません。
総括
普段意識しないだけで、榊は意外と身近な所で見掛けます。特に神社以外で役立つ樹木でもありませんが、竹の様に植えて後悔する類の植物ではないので、ご自身で育ててみるのも良いかもしれません。
尚、ご自身の土地ではない所(神社、国有地、公園等を含む)で植物含む自然物を勝手に採ると、森林窃盗罪となり、過去に逮捕事例もありますのでご注意下さい。