神社の由緒の調べ方(明治以降編)

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神社の由緒の調べ方(明治以降編)

明治以降の文献を中心とした神社の由緒の調べ方としては、前回記載した郷土史以外には、以下のものが参考となります。

・神社明細帳(明治初年~戦前)
・神社明細帳(戦後まもなく)
・法人登記簿

先ず「神社明細帳(明治初年~戦前)ですが、これは明治政府の命令で各神社が行政に提出した、各神社の概要です。現代で言うところの神社の登記簿、または戸籍に相当するものです。この明細帳は明治初年に整えられましたが、その後合祀された神社などは調書が閉鎖されました。合祀により消滅した神社=閉鎖された明細帳は、残っている場合とそうでない場合がある様です。
戦前の神社明細帳は公文書であるため現在は文部科学省が保管している様ですが、愛知県公文書館には極一部の地域のものしか存在していません。神社関係の某組織には写しがありますが、一般には公開していません。当職所管神社では数社、写し(控え)が残っています。
明治初年の神社明細帳は、江戸時代を生きた神職が記載したものが多いでしょうから、当時の神社のあり方を知る上では貴重な史料であると思います。
尚、現に存在する神社であっても戦前の神社明細帳が存在しない神社は、特殊な事情を除くと、戦前には存在しなかった=戦後に創建された神社であるか、または戦前には公的に神社と認められなかった神社(施設)であると言えます。神仏習合の名残で寺の附属施設とされた神社も、地域によってはある様です。その様なケースは、神仏分離(神仏判然令)の浸透度合いも影響したのかもしれません。

次に「神社明細帳(戦後まもなく)」ですが、これは神社が所謂「神道指令」により国家の管理を離れ、その直後に設立された神社本庁に加盟する(予定の)神社が、神社本庁に提出したものです。内容は明治期の神社明細帳にその後80年程度の歴史、特に合祀関連、また社格等の記載がなされたものと考えて差し支えありません。これも、神社本庁及びその某組織が保管しています。

次に法人登記簿ですが、一般に「神社」として皆さんがイメージされる神社は、概ね宗教法人として存在し、故に、当然に法人として法務局に登記されています。登記されていない神社は、即ち宗教法人格を有していない、「(権能なき)宗教団体」であるか、またはそもそも神社ではないかのどちらかでしょう。
戦前…特に明治維新以前より存在した神社=戦前に国から公的に神社と認められていた神社の多くは、宗教法人法施行後境内地の国からの返還を受け速やかに宗教法人格を取得したので、その多くは設立年が昭和27~29年に集中しています。当職所管の神社は昭和28年設立登記が多くなっています。
神社と称していても国家管理でなかった神社(教派神道等)の場合、適用される法律が宗教団体令(昭和14年)→宗教法人令(昭和20年)→宗教法人法(昭和26年)と変遷があるため、上記の限りではありません。ただ、それらの神社(団体)も、多くは宗教法人法施行直後に宗教法人格を取得しているものと思います。当職の知る限りで上記の事例から外れるのは、瀬戸市に鎮座する曽野稲荷神社(文化14年1817年創建)が法人格を取得したのが昭和41年と言うくらいです。明治以前から存在して、昭和も後期になってから宗教法人格を取得したと言う神社(または寺)はほぼ無く、その殆どは仮に神社神道を称していても、実質的には新興宗教の類でしょう。
勿論、例え千年以上の歴史がある神社であっても、法人登記簿から分かるのは「この神社は少なくとも昭和2●年には存在した」と言う程度です。しかし、上述の様に、昭和27~29年の登記であれば、概ねその神社がある程度昔からある神社であると推定できるわけです。これは、登録年が昭和26年の日本刀を「大名登録」と言うのに似ている様に思います。

宗教法人と神社、またその調べ方については、次回1月更新予定のコラムにて詳述いたします。