神社の法人格の有無、その詳細についての調べ方
キーワード…
・愛知県 宗教法人名簿
・法人番号公表サイト https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/
1月よりの続きです。
幕末以前から存在し、且つ現在も鎮座している神社の殆どは、明治初期~戦後まもなくまでの約80年間、国家の管理下に置かれました。所謂国家神道です。戦後の所謂「神道指令」においてそれらの神社は内務省の管理下を離れ、その後施行された宗教法人法の枠組みにおいて宗教法人として再出発しました。
今日、皆さんが想像する「神社」の殆どは、この宗教法人格を持ち運営されています。伊勢の神宮や靖國神社等の著名神社から、当職所管の村の鎮守まで、それぞれが別個の宗教法人(単位法人)です。
宗教法人格を有する神社は当然その登記がなされており、法務局やインターネットで登記簿を取得する事も出来ます。また代表役員(一般的な神社であれば宮司)に関する事項(氏名と住所等)を知る事も出来るので、ある神社の宮司の連絡先を知りたい…と言った時にも有用です。但し、登記簿を取得する為には上記の通り法務局かインターネットで正式な名称を入力したり、一社につき数百円の費用が掛かったりします。そこで、表題の通り簡単な調べ方を以下に記します。
先ず、目当ての神社が法人格を有しているかどうか…一番確実なのは、愛知県では年に一度県内の宗教法人の一覧を「愛知県 宗教法人名簿」として発行しているので、これを閲覧する事です。注意点としては、一般に「〇〇神明神社」等と呼ばれていても法人名は「神明社」であったりする事です。これは鎮座地の住所から同一の神社(宗教施設)であるかを判断するくらいしかありませんが、当該鎮座地が一覧に無ければ、それは宗教法人格を有さないか、または近隣神社の摂末社であるか…のどちらかでしょう。後者の様な事例は大きな神社に限らず、地域の氏神神社でも有り得る事です。例えば小牧市上末の八幡社には、貴船社と言う摂社があります。これは戦前は村社八幡社と無格社貴船社のそれぞれ独立した神社であったものを宗教法人法施行の際に一つの法人として登記し、貴船社を八幡社付属の神社=摂社としたからです。この様な場合は、その神社(摂社)がどこの神社のものであるかは、地域の人などに聞くしかないかと思います。
宗教法人名簿は県立図書館には蔵書がありますが、中規模以下の市の図書館では蔵書が無い場合も多いかと思います(数年前、瀬戸市図書館にはありませんでした)。この様な場合にネットで簡単に調べられる方法として、国税庁の「法人番号公表サイト」https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/ があります。
例えばこのサイトで愛知県小牧市の「天満天神社」を検索すると、当職所管の1件がヒットします。「八幡社」と検索すると8件、「八幡」と検索すると10件がヒットします。八幡社、八幡神社、八幡宮。天満宮、天満社、天満神社等、同じ神社であっても法人名と通称、社号碑等で表記の揺れが見られるのはよくある事なので、上記サイトで検索する際は、確実にヒットする文言を入力のうえ、ヒットした中から住所で判断していく…と言う法方が良いでしょう。
ここから先は費用が掛かりますが、法人登記簿を入手し、その神社の包括団体はどこであるか、いつ法人として設立されたかを調べる事も出来ます。包括団体については「神社」と称する宗教法人の場合はその殆どが神社本庁です。愛知県では稀に神道大教、御嶽教系があり、単立もチラホラとあります。
(12月のコラムとやや重複しますが)神道指令による国からの分離、またそれを背景とする神社本庁設立等色々な経緯がありますが、伝統的神社の殆どは宗教法人としての設立登記を昭和27~29年に済ませています。例えば伊勢の神宮が昭和27年10月30日、当職所管ですと兒社が昭和28年6月19日、出川の神明神社が昭和29年4月30日に設立登記をしています。戦後すぐの宗教法人令において登記をした神社の例外を除けば、上述の時期に集中し、その後昭和30年代以降に登記されると言う事例は殆ど見られません。自身が知る中では、曽野稲荷神社が昭和40年代の登記ですが、曽野稲荷神社は戦前の神社明細帳に記載がなく、また現在も単立であるためやや特殊な事例と言えます。また「~神社」と称していても昭和後期や平成期に設立登記された宗教法人は、実態は「新興宗教的な何か」と見て良いでしょう。
勿論、法人格を有さずとも歴史のある神社(祠)と言うのは存在します。当職氏子地域のある祠は戦国時代から鎮座し戦前は神社明細帳に無格社として記載がありましたが、戦後宗教法人格を取得しなかったため現在は任意の宗教団体(地域で管理)となっています。今後維持が難しくなるので、近隣の氏神神社への移設を検討している所です。この様な事例(由緒正しい非宗教法人神社)は数は少ないもののそこそこはある様ですが、区画整理や集落の衰退、また記録の散逸等で今後その由緒を辿る事が難しくなってくるかもしれません。
上記が、神社の宗教法人としての調べ方です。
恐らくほとんどの方は、法人としての神社を調べる機会(必要性)は無いと思います。実例としてあるのは、工事などで車両を一時的に停めたいとか、工事の仮設物を設置したい等で土地登記簿から法人登記簿を調べ、代表役員の所に連絡してくる…と言ったくらいでしょうか。
しかし、「殆どの神社は宗教法人である」と言う事は、知っておいて損はありません。と言うか、永年神社の総代を務められている方でも、当該神社が宗教法人である事をご存知ない方も見えます。
普段から「宗教法人としての神社」を意識する事は我々でもあまりありませんが、神社も一般企業の様に法人格を持ち運営されている、と言う視点で見れば、また違った見方も出来るのではないでしょうか。